「数年前ドクメンタにでて以降の2年間、いろんな美術館や芸術祭に呼ばれて、本当に忙しんだけど。ギャラが安すぎて、暇はないけど生きていけないよぉ」
先日、ベトナムから来た旧友のアーティストMが話していた。
これは作家としてキャリアをある程度積んでくると見えてくる一つの現実だろう。
美術館や芸術祭での展示へ参加して作品を作れることは、大きな経験であるし、たくさんの人々からフィードバックをもらえるのは最高の舞台。しかし、1年や半年かけて準備した展示への報酬は平均15万程度が多く(美術館が購入してくれるハードルも高く基本期待はできないし)、月1回だけ展示をするとしてその準備は複数が同時にかななりながら進み続けるわけで、月一回、年10本程度の展示であっても大忙しではある。(この計算だと年収150-200万程度。月2本年間24本くらいやってようやく初任給レベル? 年間24本も展覧会している作家といえば超超売れっ子だし、そんなに呼ばれる状態が何年も続く作家もかなり稀有。)
Mが言うように、いろんな美術館や芸術祭に呼ばれてて、表面的に”売れている”状態でもビジネスとしては非常に困難な状況となる。だから作家として生きていくためには、結局そのキャリアを利用してビジネス/サバイブをしていかないといけない。その展開ができるかが”中堅”の鍵になる(かな?)。名刺は配り終えた(名前はそれなりに知ってもらえた)…、その次のステップを簡単にいうと、「売れる作品を作る」か「教育に関わる」か「副業をする」か「転職するか」な(他にもあるだろうが)。しかし、Mの作品(僕の作品も)は、プロジェエクとベースの作品で、売れにくいタイプでありなかなか難しい。逆に画家を中心にビジネス的に成功している作家は、それなりに美術館で発表しながら、そのキャリアを使ってビジネスをしっかり稼いでいて、表面的にはそこまで露出は見えないがしっかりと生きている。(ベネチアに参加しても謝礼が20万円、という衝撃の記事が出ていたが、ここに参加したことでその後にビジネスで稼いでいく作家も多い、とも言えるわけで。ギャラが安いことを暴露したいと言うことではなく、キャリアなどをどのようにそれを仕事に変えるかの話でもある。)うーむ。
自分の場合、純度の高い作品を挑戦しようとすると、ビジネスと反対方向に行ってしまう…。コマーシャルギャラリーからお誘いが来ないもの、そういうビジネスと縁遠い雰囲気があるのか? それでも、これまでサバイブしてこられているのは、後押ししてくれる人々がいてくれたからで幸運でしかない。色々、自分なりに挑戦を続けていこう。