観光地直島

秋になった直島には今日も観光客が溢れている。
観光業に従事する島民から「2018年(2019年は瀬戸芸は特別なので)の直島に戻った」と聞く。2020年春コロナ禍に入った時、彼らは「30年前の直島に戻ったようだ」と話していたがそれも一瞬で過去になったようだ。島が活気付いている。
僕は「家プロ」がある本村集落に住んでいるので、島への観光客の反応は敏感に感じとれる。中国人観光客が多かった2018年とは違い、今は中国人がかなり少なく逆に欧米や韓国の団体客が目立っている、とか。そんな中で、観光客ではなく移住希望者も宿や飲食店をやりたいと押し寄せている。僕が知っているくらいだから問い合わせは町役場にはかなり多く来ているのだろう。でも、島に空き家はない。あるなら自分もMハウスから引っ越したいし、島民たちも常に探している。そういった個人の奮闘を飛び越えて、プロの都会の開発業者が上物ごと土地をどんどん買い占めている。ある業者に至っては、放置されていた(景観的にも重要な)旧家ばかりを買い漁っているそうだ。
30年以上前に始まったベネッセによる直島の観光開発は大成功したわけだが、今では誰も未来の(アートの次の)島の産業を想像もせず、”アート”と”観光”をひたすら消費し続けているようにみえる。数年後、この島はどうなっているのだろうか……。

そういえば、先週久しぶりに尾道に行ったが。尾道も観光客が増え、10年前くらいからは商店街などの風景がかなり変化した。ただやはり、この集落は高低差や街並みや港などの独特の地形や歴史や風土が深く根付き、ちょっとやそこらの開発ではその魅力は壊されないような強さを感じた。それに比べ、直島も美しいがその魅力は他の瀬戸内の島々と比べると、建築やアート、近代工業やホテルやビーチなど近代以降に人工的に作られたものが多い。だからこそ、直島の未来はとても心配になってしまう。

まぁ、そんな中で、僕ができることは、島民の人たちと日常を送りながら、せっせと島の過去を収集し地域のアーカイブを作ること。いやそれは観光地化した今、新しく過去になるものも含めて。これは写真的だと思う。中村由信が写真の中に残したように、未来大きく変化した島で島民が開封できるだろうタイムカプセル。僕は今目の前のビジネスではなく、過去と未来を行き来しながら、自分は自分の仕事をするのみ。あと、子育てに励むのみ。

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