直島の「地域おこし協力隊」

(これは家族の総意ではなく個人的な意見である。これが将来誰かの参考になればと思い記述しておく。)

下道家の直島町への移住は、以下のように行われた。

1、2019年の資料館のプロジェクトのための下見の時に、直島に移住していた大学の後輩と会い、直島の住みやすさについてと、「地域おこし協力隊」の募集の話を聞く。
2、プロジェクトのための下見の時に、観光客への直島ではなく、このローカルの魅力を感じる出来事があった。
3、直島へ移住する利点として、「長期プロジェクトを誰もやったことがない作品にするため」「ご近所関係や自然など子供を育てる環境として」「「地域おこし協力隊」になれば住む家も見つかり家賃がなくなる」などを感じた。愛知の家に戻り、家族に相談。
4、「地域おこし協力隊」について調べる。大学の後輩への聞き込み。他の地域で協力隊として活動する知人への聞き込み。
5、妻が「地域おこし協力隊」として受かり、2020年3月移住。
6、海が見える新しい家を無料に住み始める。
7、3年の任期を終えて、島内で山の方の引っ越し、さらに生活を続けている。

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「地域おこし協力隊」は、2009年に総務省が制度化。都市部から地方に移り住み、地域の魅力発信や新しい活性化をサポートする移住促進の取り組み。任期は3年以内。支援は480万円上限。と正式には。
で、簡単にいうと、日本全国の地方自治体で「地域おこし協力隊」の募集があり、都会から地方へ移住してみたい人が、1ー3年程度お金や家を支援されながら住んでみて、さらに、3年満期終了する際は100万円程度の準備支度金が支給されて、その地域に根付く。といいな。という、そういう制度。

しかし最近では、(Youtubeなどでご存知の方も多いかと思うが)都会から地方に移住したい若者と、若者に期待する地域の住民のトラブルは絶えないし、根付かないことも多い。 
実際に色々な現役の地域おこしの人が「協力隊を終えて何をしたいか?」を答えた記事などを見ると、多くの人は「ブックカフェ」や「ゲストハウス」などがずらりと並んでいる印象。田舎でオサレな古民家ブックカフェ、地域住民との交流の場になって、ってまぁ夢だわな……。でも多分、地域の方が欲しいものと、都会から移住した人が田舎でやりたいことのズレは大きいのだろうな。
(あと、あるコメンテーターがこの話で指摘していたが「都会から移住する人の経験や考えが甘く、経験値やコミュケーションでの問題解決能力があれば、その田舎のおじちゃんおばちゃんとも喧嘩などせず話し合えて出口を見出せるのでは?」という意見もあったが、それもなくない話だろう。でも、地域側にも責任はある。)

この制度の見えない落とし穴の一つは、町役場が内容や賃金を決められる、ということにもあるだろう。
つまり、地域によって自分の活動以外に町役場から求められる仕事の量や資金の使い方が全くバラバラだということ(さらにそれをそれぞれの役場が共有していないということ)。
「地域の魅力発信や新しい活性化をサポートする」という意味を、その自治体がどう考え期待しているか。都会からくる移住者は自分でこの地域に入り込んで地域に何か新しいカフェやゲストハウスやらを作って地域新聞やwebを作って発信するなどキラキラしたアイデアを想像しているが、町役場はそんなことは望んでいなくて役場の今までの普通の仕事を手伝ってほしい、とか。ま、町は町のための雇用者、移住者は自分の新しい仕事を作りたい、その思惑は合致するのだろうか。
例えば、僕の知人の人の地域では、「朝に役場に行って、ポンとハンコを押すだけ(もしくは午前中だけ観光課にいれば)、あとは自分の好きな場所で好きな活動をして良い」という協力隊の人に何人か会った、それは普通なのだけどかなり良心的なケース。ある岡山の友人はこの制度を利用してアーティストを自分の地域に移住させて、アーティストインレジデンスのような環境を生み出していたし、他のアーティストの友人は林業の地域に移住してそれを利用しながら新しい作品づくりをおこなっている(ほとんど役場に行く必要のない自由な地域を選んだらしい)。
直島もかつてはそういう”緩い”感じであったらしいが、徐々に内容は役場に都合の良い方向に変化している印象を受ける。今では8時30分~16時30分きっちり役場で働く、仕事は町の観光課の仕事や移住促進の仕事を担当する、役場の労働者である。しかも、賃金は時給1000円程度、月にフルタイムで役場で労働して雑務をして18万円程度、時に残業もある。(年間で240万円程度。役場の観光や移住の雑務で毎日クタクタな状態になる。)
つまり、地域行政によっては扱いやお金は様々である、ということ。
よく条件を確認しておかないと、「都会の若い労働力を田舎暮らしを餌に最低賃金で働かせたい地方自治体」の場合もあるし、このよく分からない不明瞭な制度のせいで、地方行政と都会移住者のそれぞれの”期待”の食い違いが多く発生しているのは事実だろう。逆に地域側から見れば、起業と称して田舎暮らしを夢見る自称アーティストやデザイナーたちは旅気分だし、どっちもどっちか?

もちろん、直島は都会からの移住者には基本的に優しいいし住みやすいし、住民は本当に親切だし、田舎の良さも十分にあるし、観光客も絶えないから商売もしやすいし、本当に素晴らしい場所である。

僕ら家族の移住の目的は、この観光的に恵まれた環境に入り込んで商売を始めたいというのではなく、この島の環境が生まれたばかりの娘を育てるのに良さそうだということと、僕自身のこの島でのプロジェクトをより良いものにしたいとということ、さらにいうと、そこに家族の新しい仕事を模索する可能性も期待せず見ていて、妻が協力隊になってくれた。だから普通の協力隊の移住者の期待とは少し違うのかもしれない。
直島はブランド力があり、移住したい若者が多い。だから、結構厳しい条件でもありがたく若者は集まってくるのかもしれない。直島にカフェやゲストハウスをするためにまずはこの制度を使って地域に入り、その後夢を実現させる。それなら、僕たちの場合いろいろと協力隊の現状を調べてみた中でもなかなかハードな条件のこの島の協力隊も良いプロセス/経験かもしれない。それは個人個人が判断することだ。直島へ移住するには空き家もないしハードルは高いし、この3年間で地域と関係を作り少し入り込めるだろうし、これを自分達の意思で利用することは良いと思う。
妻は、職場で一緒に働いている人々は素敵な人が多かったと言っていた。ここに書いているのは僕の見聞きした個人的な見解だ。僕の思いつきで家族を直島に移住させたし。妻が協力隊として新しい挑戦をしてくれたから、町営の海の見える素敵な家を無料で3年住むことも出来たし。でも、3年間フルタイムで、働きなれない地域の役場の仕事をやり続けた妻が徐々に疲れていく様子を見るのはとても辛かった。彼女は「途中で辞めたくない」という強い気持ちで先月ようやく3年間やりきった。だから今年からは直島での生活や子育てを一緒にもっと素晴らしいものにしたいと考えている。移住3周年を終えて、4月新しい生活が始まっている。今年は島の運動会や祭りもあるだろう。今から楽しみだ。 

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直島町地域おこし協力隊員募集要項

直島町は、香川県高松市の北方13km、岡山県玉野市の南方3kmの備讃瀬戸最狭部に位置する大小27の島々からなる町です。金と銅の製錬などで栄え、現在では製錬に加え、環境やアートの町として知られています。特に現代アートを楽しもうと、国内外から多くの観光客が集まってきていますが、少子高齢化や人口減少もあって、地域の将来を担う人材が不足しています。そこで、島外からの人材を受け入れて、地域に活力を与え、魅力ある町にするために「地域おこし協力隊員」を次のとおり募集します。

1.募集人員  1名

2.活動地域  直島町内

3.活動内容 ←ここの内容は毎年若干の変化あり。
  ⑴ 空き家・空き地対策に関する活動
  ⑵ 移住促進に関する活動

4.募集対象 募集対象者の条件は、次のとおりとします。
  ⑴ 応募時に3大都市圏をはじめとする都市地域等に居住しており、任用後、直島町内に生活
    拠点を移し、住民票を異動できる方
  ⑵ パソコンの操作(ワード、エクセル、イラストレーター、フォトショップ等)、情報発信
    ができる方
  ⑶ 活動内容を積極的に企画・提案・実行できる方
  ⑷ 地域住民と協力しながら、地域の活性化のための活動に取り組める方
  ⑸ 応募時点で、年齢20歳以上の方
  ⑹ 性別は問いません。
  ⑺ 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第16条に規定する欠格条項に該当しない方
  ※ 「3大都市圏をはじめとする都市地域等」とは、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、
  岐阜 県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県及び奈良県の区域の全部、政令指定都市
  及び「過疎、山村、離島、半島等の地域」に該当しない市町村。
  (詳しくはお問い合わせ下さい。)

5.雇用形態及び期間
  ⑴ 直島町の会計年度任用職員とします。
  ⑵ 任用期間は、令和3年4月1日から令和4年3月31日とします。ただし、活動に取り
    組む姿勢・成果等を勘案して、最長で任用日から3年まで延長します。年度単位で更新
    とします。

6.勤務日及び勤務時間
  ⑴ 勤務日は、原則週5日で月曜日から金曜日とします。
  ⑵ 勤務時間は、1日当たり7時間を基本とします。(8時30分~16時30分)
  ⑶ 休日は、土曜日、日曜日、祝日及び年末年始(12月29日から翌年1月3日まで)

7.報酬
  ⑴ 時給1,011円(参考月額141,540円【月20日で計算】)
   (この額から社会保険料の本人負担分等が控除されます。)
  ⑵ 上記勤務日及び勤務時間以外の時間に勤務した場合は、町の支給基準により、時間外
    勤務手当を報酬として支給します。
  ⑶ 期末手当を2.55月分(初回任用時は1.64月分)、6月・12月に分けて支給し
    ます。
  ⑷ 通勤に要する経費を町の支給基準により、費用弁償として支給します。
  ※ 1年目の合計年額240万円程度

8.待遇・福利厚生
  ⑴ 社会保険料(雇用保険・厚生年金・健康保険)に加入します。
  ⑵ 家賃については、月額3万円を限度に町が負担します。 転居に係る費用・生活備品・
    光熱水費等については、各隊員が持参、または個人負担となります。
  ⑶ その他、活動に必要な経費について、予算の範囲内で町が支給します。

9.応募手続
  ⑴ 申込受付期間 令和2年10月1日(木)から令和3年1月29日(金)まで(必着)
  ⑵ 提出書類 所定の応募用紙に住民票を添付の上、直島町まちづくり観光課に郵送又は
    持参して下さい。

10.選考の流れ
  ⑴ 審査方法
  (第1次選考) 書類審査の上、結果を応募者全員に文書で通知します。
  (第2次選考) 第1次審査合格者について面接審査を行います。日時等は第1次審査結果を
          通知する際にお知らせします。
   ※選考日:令和3年2月中旬頃

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