無題


与論島1日目。2015年9月18日朝5:30。
部屋の戸をノックされて目覚める。
「津波が来るから、6:30に高台に避難します!」
寝ぼけ眼に民宿のおかみさんの慌てた声。外はまだ暗い。夜洗ったシャツは乾いていない。

6:20。スリッパをぺたぺた言わせてロビーに向かう。キッチンでは民宿の家族やスタッフ総出で大きなおにぎりを握っている。傍らのテレビではニュース番組がつけっぱなしになっている。南米チリで大きな地震があったという。津波の到達予定時刻は7:30となっている。
「ごめんね。びっくりして早くおこし過ぎちゃったね。」

僕ともうひとりの宿泊者そして宿の家族とスタッフ、全部で7人、宿の名前のプリントされた小型のバスに乗り込む。その頃には、外はすっかり明るくなっている。
高台につく。島で一番高い場所だと言う小さな公園には、おばあちゃんと小さな孫娘らしい子がふわふわと風船を片手にぼんやりとしている。
駆け上がると、周囲340度くらいがすべて水平線で、本当に地球が丸くてその上に立っているように感じた。
おかみさんは一畳くらいの大きさの公園のベンチに、作ってきたおにぎりや沢庵を広げ始める。ベンチをちゃぶ台のようにして朝飯を食べる。チリのある東の方の海を意識しながらも、それぞれ自分の自己紹介や色々な話をする。おかみさんは、宝石や大切な物たち、長期戦に備えて本まで持って来ていた。
僕らは、地球の裏側からやってくるかもしれない波を待ちながら、時間を過ごした。

7:30。ひとりが「島を囲むリーフにいつも出来る白波が消えていない?」と話す。
みんなで遠くの海を眺める。そして、少しして、また普段の海に戻った。

下道00001.jpg
『ヘテロトピア通信 第6回』2015.12.16寄稿